下水道のある路地裏では「デスマッチ」という無規則の戦いが開かれていた。
そこに群がる賭博師たちは真夏の灯に集まる虫のようだった。
当然非合法であったが、世の中の混沌が深くなる度、
人々は裏の世界で広がる純粋な戦いに熱狂することで現実の苦しさから目を背けた。
その黒い熱狂の水たまりはやがて湖になり、
国も下手に手を出すことが出来なくなってしまった。
喧嘩屋はこの「デスマッチ」の超新星だった。
その出身も、名前も知られてはいないが、
この無名の参加者が 裏通りの支配者になるまで、そう時間はかからなかった。
極めて残酷、隙がなく狡猾な彼は勝利のためにどのような手段でも使う。
何の規則もない路地裏のコロセウムの中で「生き残る」方法は意外と多い。
だが「勝ち残る」ことだけを考える喧嘩屋と出会ったら、逃げた方がいいだろう。
彼は妥協せず、もっとも卑劣な手段で襲い掛かって来るからだ。